歯医者に通うことなく歯を清潔に保つことが可能なのが、ホームホワイトニングです。ホームホワイトニングは処方される薬の用法・用量を守ることも大切ですが、唾液の量も重要な要素になります。それでは、なぜ唾液の量がホームホワイトニングをする際に大切なのでしょうか。今回は、ホームホワイトニングと唾液の関係性について解説します。
実は重要！口の中の唾液の役割とは？
唾液には、まず、消化を助ける機能があります。唾液には、糖分を分解して体内に吸収しやすくする酵素である「アミラーゼ」が含まれているのです。また、唾液は粘膜を潤す役割も担っています。唾液で口の中が潤っているおかげで、硬い歯と柔らかい粘膜が接触しても、粘膜に傷が付くことがないのです。唾液がなければ、喋ったりものを食べたりするだけで、粘膜に傷がついてしまうでしょう。さらに、唾液があるおかげで食べ物が飲み込みやすくなるため、スムーズに食事をとることができるのです。
唾液には、抗菌作用もあります。唾液には、外から体内に侵入してくる細菌を防ぐ役割を持つ「リゾチーム」という酵素が含まれているのです。リゾチームは唾液だけでなく鼻の粘液や肝臓、汗や涙にも含まれており、身体を健康に保つために必要不可欠な酵素となっています。さらに、唾液に含まれる「ムチン」は、菌を集めて固め、体外に排出する機能を持っているのです。また、唾液は味覚を正常に維持するためにも必要なものとなっています。
味覚には甘味や酸味、苦味などさまざまなものがあり、味覚が正常に働くことによって、私たちは食事を十分に楽しむことができるのです。しかし、唾液の量が不十分だと、甘味や酸味といった細かい味の感覚がわからなくなってしまいます。口の中に入った食べ物の味物質は、唾液の中に溶け込んで舌の「味蕾」と呼ばれる味を感じるための器官に届けられるのです。唾液によって味物質が滑らかになることによってスムーズに味蕾に運ばれ、正常に味を感じ取ることができます。唾液がなければ、食べ物が舌にこすれたり舌が炎症を起こしたりして、味蕾が正常に機能しなくなってしまうでしょう。唾液がなければ、食べ物の本来の味がわからなくなってしまうのです。
唾液は口の中を清潔にする役割も果たします。唾液は常に口の中を洗い流す機能を働かせており、唾液がなくなると、虫歯になりやすくなったり口臭が出やすくなったりするのです。また、唾液があることによって、口の中を中和することができます。食べ物を食べる、飲み物を飲むなどした後は、口の中が酸性になりがちです。口の中が酸性の状態になったまま時間が経つと、虫歯になりやすくなってしまいます。唾液には重炭酸塩が含まれており、重炭酸塩の働きによって、口の中を中性に保つことができるというわけです。
また、唾液には再石灰化作用があります。虫歯になると、虫歯菌から出た酸が歯のカルシウムやミネラルを溶かしてしまうのです。唾液には溶けだしたカルシウムやミネラルを補充し、歯を治そうとする働きがあるとされています。歯の健康を保つためには、唾液は必要不可欠なのです。
ドライマウスの症状とは？
唾液の分泌量が少ない状態のことを、「ドライマウス」といいます。唾液は主に、3大唾液腺である耳下腺、顎下腺、舌下腺から分泌されており、1日に約1000～1500mlほど分泌されているのです。加齢だけでなく、ストレスや疲れがたまると唾液の分泌量が減ってしまい、ドライマウスになってしまいます。唾液は細菌を洗い流す機能を持っているのです。そのため、唾液の量が十分でないと、虫歯や口臭、歯周病などの原因になってしまいます。また、言葉を発しにくくなったり、食事の際に噛むのが大変になったりすることもあるでしょう。さらに、食べ物の味が変わったと感じることもあります。
ドライマウスにならないよう、食事の際はよく噛んで唾液の分泌を促しましょう。また、梅干しなどすっぱいものを食べることによって、唾液の量を増やすことが可能です。さらに、唾液の分泌量は夜寝ている間が最も少なくなります。そのため、夜間は口の中で菌が繁殖しやすいのです。就寝前は、丁寧なケアをする必要があるといえるでしょう。
ホームホワイトニングと唾液の関係
ホームホワイトニングをすると、一時的に口の中の水分量が低下します。そのため、ホワイトニングの後に冷たいものを食べるとしみるなどいった症状が出ることがあるのです。こういった知覚過敏の症状は、唾液の働きによって口の水分量が増えれば解消されます。しかし、唾液の量が不十分だと口の中の水分量が元に戻らず、知覚過敏の症状が長引いてしまう可能性が高いです。また、唾液には歯の再石灰化を促す作用があるとされているため、ホワイトニングをする際は唾液が十分に分泌されている必要があるでしょう。
また、ホームホワイトニングは専用のマウスピースを作成し、そのマウスピースに薬を塗布して装着します。そのため、虫歯や歯肉炎があると痛みが生じる原因になってしまうのです。ホワイトニングをする際は、まず虫歯やそのほかの口の中の病気を治しておく必要があるといえるでしょう。そして、虫歯などの症状の回復を早めるためには、唾液が正常に分泌されている必要があります。効率的に歯のホワイトニングを進めるためにも、唾液の状態には気を配っておくことが大切です。
唾液の分泌を促すポイントは？
唾液腺には耳下腺、顎下腺、舌下腺の3種類があり、それぞれを適切にマッサージすることによって唾液の分泌を促すことが期待できます。まず、耳下腺は耳の前、上の奥歯のあたりにあります。その部分に数本の指をあてて、前方へ指全体を使って優しく10回ほどなでましょう。次に、顎下腺のマッサージです。顎の骨の内側の柔らかい部分にあるのが顎下腺です。顎下腺に親指を沿わせ、耳の下からスタートして顎の下へと向かって3～4カ所に分けながら順に押していきましょう。押す回数の目安としては、定めた3～4カ所のポイントをそれぞれ5回ほど押せば十分です。最後に、舌下腺のマッサージ方法を解説します。
顎の先端の内側のくぼみが、舌下腺です。くぼみに両手の親指をそろえながらあて、10回ほど上方向に優しく押し上げましょう。舌下腺をマッサージする際は、喉を押してしまわないように気を付ける必要があります。
