夏場の身だしなみとして脇汗に気をつけている人は多いのではないでしょうか。暑いときには誰でも全身に汗をかきます。もちろん脇にも汗をかきますが、それを「恥ずかしい」と感じている人は少なくありません。汗の多さは体質によるところが大きいとされていますが、体調や食生活など、さまざまな要因も影響します。季節に関係なく脇汗が多い場合には原因別の対策が必要です。脇汗の原因として考えられること、そして対策について説明します。
脇汗とワキガの違いは?
額や背中に流れる汗と比べて、脇汗にはなんとなくマイナスイメージがつきまとうのはなぜでしょうか。それは独特の臭いを発するワキガを連想するためかもしれません。脇には2種類の汗腺があり、そのうちのひとつがワキガの原因になります。
暑いときや運動をしたときに出る汗は「エクリン汗腺」という汗腺から出るものです。エクリン汗腺はほぼ全身にあり、とくに手のひら、足の裏、脇に多いとされています。体温調節のために出る汗で、ほとんどは無臭ですが、食べたものや生活習慣によっては臭いを感じることもあります。もうひとつの汗腺は、脇やデリケートゾーンなどに存在する「アポクリン汗腺」です。エクリン汗腺から出る汗はほぼ水分であるのに対し、アポクリン汗腺から出る汗にはタンパク質や脂質などが含まれていて、それらの成分がワキガ臭のもとになります。じつはアポクリン汗腺から出る汗の役割は、体温調節ではなく体臭を作ることなのです。
なぜ避けられがちな体臭をわざわざ作るのでしょうか。動物が持つ体臭は、仲間を識別したり異性をひきつけたりするのに必要なフェロモンです。もちろん人間にもその機能が備わっていて、誰にでも多少の体臭はあります。ただ、アポクリン汗腺の数や発達度合いによっては体臭が強くなり、ワキガといわれる独特の臭いになるのです。
脇汗の原因には何があるの?
大勢の前に立ったときなどに、緊張のあまり手や脇にじっとりと汗をかいていたという経験がないでしょうか。気温が高いときや運動をしたとき以外にも、緊張や興奮など精神的な刺激で汗をかくことがあります。これは「精神的発汗」と呼ばれ、手のひらや脇など局所的、そして短時間に発汗するのが特徴です。エクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類の汗腺がある脇は、とくに汗をかきやすい部位といえるでしょう。
睡眠不足やホルモンバランスの乱れなども汗が増える要因です。代表的なものには、更年期にみられるホットフラッシュという症状があります。血管の収縮や拡張をコントロールする自律神経が乱れることが原因で、季節や気温に関係なく大量の汗が出るのが特徴です。
食生活も汗のかきやすさに影響します。熱いものを食べたときに出る汗は、急激に上がった体温を調節するためのものです。また、辛い食べもので味覚が刺激されたときにも汗をかきやすくなります。これは副交感神経のバランスが崩れるためといわれています。食べるものによっては汗の量が増えるだけでなく臭いの原因になることがあるため、とりすぎに注意しましょう。
脇汗をかきやすい食品は?
熱いものや辛いものを食べたときに汗をかくというのは珍しいことではありません。しかしなかには、熱い・辛いに関係なく、食事のたびに大量の汗をかいてしまう人がいます。あまりに汗が多いために「食事を楽しめない」「人目が気になって外食ができない」といったお悩みを抱える人もいるかもしれまません。これは「味覚性多汗症」と呼ばれる症状で、くわしい原因はわかっていません。ただし、食品のなかには汗をかきやすくするものがあります。これらの食品を控えることで食事中の汗を多少は抑えることができるかもしれません。
汗をかきやすくするとされる食品は、香辛料、肉類、乳製品、お酒、インスタント食品などです。口から入れた食べものや飲みものがエネルギーに代わるとき、多くの熱が発生して体温が上昇します。肉類や乳製品、インスタント食品など脂肪分の多い食事は、とくに熱を発生するため、汗をかきやすくさせるといわれています。また、汗の量が増えるだけでなく臭いにもつながりがちです。香辛料の多い食品は味覚を刺激し、副交感神経のバランスを乱すことが発汗につながります。アルコールやカフェインは中枢神経を興奮させ、発汗を促します。いずれもとり過ぎを避け、適度な量を楽しむようにしましょう。
反対に発汗を抑える効果があるとされているのが、植物性タンパク質です。とくにおすすめなのが大豆製品で、大豆に含まれるイソフラボンは汗を抑えるとともに、臭い対策にも効果が期待できます。
脇汗の対策には何があるか教えて!
汗腺の数には個人差があり、汗をかきやすい人がいれば、かきにくい人もいます。しかし、発汗は自分ではコントロールできないため、ことさらコンプレックスに感じる必要はありません。とはいえ身だしなみとして、臭いには気を配っておきたいところです。とくに脇汗は臭いにつながりやすいため、きちんと対策することをおすすめします。
まず、脇汗をかいたらこまめに拭くことが大切です。水で濡らして固く絞ったタオルやハンカチ、使い捨てのウェットティッシュや汗拭きシートなどを利用して、汗や皮脂汚れをさっぱりと拭きとるようにしましょう。脇を清潔にしたうえで、汗をコントロールする制汗剤を使用すると効果的です。清涼感のあるスプレータイプ、持続性のあるクリームタイプ、コンパクトで手軽に使用できるロールオンタイプやスティックタイプなど、さまざまな制汗剤が発売されています。肌質や使い勝手などを考えて、自分に合ったものを見つけてみてはいかがでしょうか。脇汗には脂質を含んだアポクリン汗腺からの汗も含まれるため、時間がたつと黄色く変色してしまうことがあります。お気に入りの服に汗じみをつけないためには、使い捨ての脇汗用パットや脇汗対策インナーを使用するのも良い方法です。
緊張で汗をかくことが多いという人は、なるべくリラックスするために腹式呼吸をしてみましょう。椅子にゆったりと腰かけて、鼻からゆっくり息を吸って、おなかに空気を送り込みながら膨らませます。3秒ほど止めて口からゆっくりと吐き出しましょう。高原や海などを想像しながら行うと、よりリラックス効果が高まります。また、発汗を抑えるツボを覚えておくと役に立つかもしれません。手の甲の人差し指と親指のあいだに、それぞれの骨が合流する地点があります。そのあたりを押していると、軽く刺激を感じるくぼみが見つかるはずです。自律神経に働きかける「合谷(ごうこく)」というツボで、発汗を抑える効果が期待できます。反対側の親指で押したり離したり、また押し回したりして刺激してみましょう。また、乳首から4cmほど上にある「屋翳(おくえい)」というツボも、汗を抑えるのに効果があります。
いろいろと試してみたけど改善しないという場合は、皮膚科や形成外科、美容外科などのクリニックで相談してみてはいかがでしょうか。手術で脇の汗腺を切除または破壊することで、ひどい脇汗やワキガを改善することができます。手術方法や費用は症状によって異なるため、医師としっかり相談するようにしましょう。「手術はイヤ」という人にはボトックス注射がおすすめです。薬剤で筋肉の動きや神経の伝達を抑制することによって汗を抑える治療法で、効果は半年ほど持続するとされています。